2024/08/03

東海道新幹線 保守用車両脱線事故への対応がお粗末すぎる☆

先日発生した東海道新幹線の保守車両脱線事故、色々とビックリでした(@_@)

※ここでは、事故車両の撤去にこんなに手間取るの?!は触れません。

今回の事故発生以後の、JR東海の旅客向け情報提供のズサンさ、それを許す社内危機管理意識の欠落、に不安と不信を感じざるを得ません。

お忘れになっちゃってると思いますが、JR東海は去年の夏休みも、やらかしているんですよね。

・お盆の3日間新幹線が大量運休 2023/8/15-17

毎年毎年、丸1日以上の運休と混乱が続く状況を鑑みると、JR東海社内に、

・危機管理能力や緊急事態を察知する肌感覚や人材が欠落

・そもそも設定するリスクのしきい値や想定が甘く、机上の空論/画餅で満足

していると言わざるを得ません。

 

■終日運休の告知が遅すぎ

東海道新幹線が不通、の一報は6時台のニュースで知った。

ただ、ニュースの論調は、保守車両の脱線ですぐ復旧する、ようなニュアンス。

おそらく、JR東海のプレス向け資料に深刻さをうかがわせる情報や記述がなかったので、

「よくある軽微な事故」 「すぐ復旧するんだろう」

と受け取っての報道だったのだろう。

実際、JR東海の「初報」(7/22 5:19のX公式掲載)では、

「...豊橋-三河安城間の夜間作業遅れの影響により、始発列車より、浜松駅-名古屋駅間の上下線の運転を見合わせます」

としか掲載されていない。

これだけ見たら、

「保守作業の遅れだったらすぐ復旧するでしょ♪ 」

「止まっているのは名古屋の辺りだから影響も少ないかな♪」

と、在京報道機関が思い込んでもおかしくはない。


ところが、7時台になると、様子が一変する。

世間は学校の夏休みに突入しており、平日の仕事客に加え、旅行客が、一向に動かない東海道新幹線の駅にどんどん集中して滞留、一気に深刻な状況に陥っていく。

報道機関も、ようやく異変に気付き、駅からの中継が一気に増えはじめた。

ただ、この時点でもJR東海社内では、

「午後には復旧できるでしょ♪」

という正常性バイアスに陥っていたことを想像させるに足る事実が積み重なっていく。

この時点で、新幹線の駅にいた人々に対して、JR東海の駅員たちは、提供できる情報が何もない状況に陥っていた。

指令所からも本社からも、復旧時刻も運行再開見込み時刻も、運行区間や運行列車種別も、何も情報が降りてこず、

「運休しています。」 

「再開時刻は未定です。」

を繰り返すしかない、苦しい状況だったことは想像に難くない。


何の進展や情報提供もないまま、9:42になってようやく、

「運転見合わせのお知らせ...(中略)...夕刻まで復旧作業が続く見込みのため、運転再開の見込みは立っておりません。」

と発表。

事態はさらに深刻さを増していく。

この時点で、

・東海道新幹線はどこからどこまで動いているのか?

・運行本数やダイヤは?

・不通区間の代替乗車方法は?

などは、まったく報道されておらず。

これらの情報があったのは、東海道新幹線の駅改札口だけ、という状況。

これでは、

「取り敢えず駅に行けば何とかなるかも」

と考え、乗車予定客は駅に行ってしまうのは必定。

既に、新幹線に乗り慣れていない乗降客がけた違いに多い京都駅は、新幹線改札だけでなく、在来線にまで客が押し寄せてパンク状態になっていたことがニュース映像からわかる。

JR東海が公表したこれらの情報を、NHKが報道したのは、既に半日経った、お昼のニュース。しかも、

・運行本数は1時間に2本程度。

・不通区間は浜松駅と名古屋駅の間。 

・全線運転再開のめどはたっていない。

という、利用者にはまったくわかりにくい情報のみ。

この後も、JR東海がネット上に公開した情報は、利用客にとって有用なものは何もなく、保守車両の状況報告と在来線の混雑情報のみ。


夕方近く18:07、ようやく、JR東海は「終日運転見合わせ」を宣言した。


■JR東海の対応がお粗末すぎる

まずは、不通だった、浜松駅(のちに豊橋駅)-名古屋間の在来線。

次に、新幹線の本数が少なすぎる。

最後に、状況判断と情報提供が遅すぎる。

 

まず、在来線。

なぜ、増発や車両増結をしなかったのか?

なぜ、JR境界駅の米原駅や熱海駅まで行先変更しなかったのか?

明らかに、緊急事態でしょ?東海道新幹線が運休するなんて。

16両編成の新幹線から乗り換える先が、4両編成6両編成じゃどう考えたって足りていない。

加えて、新幹線の本数がほとんどないのであれば、運ぶ人数を増やすために境界駅まで直通列車を設定したり、区間増発したりする手だってあったはず。

JR東海全社一丸となって、総力を挙げて、他線区を犠牲にしても、東海道線に車両を投入しなかったのは、鉄道会社や鉄道員としての気概が感じられない。

また、他の交通機関が臨時便を急きょ運航/運行したのと比べると、危機感がなさすぎ。

※東京-大阪間の人流確保のため、JAL/ANA/北陸新幹線が臨時便運航。


次に、新幹線の本数。

1時間に2本、しかも各駅停車のこだまのみって、省きすぎでしょ。

平常時は、速達ののぞみが1時間に6本、ですよ!

もはや、新幹線は動いていないのと同じ、と言っても過言ではない。

 

最後に、状況判断と提供する情報の遅さ。

前述の通り、不通区間の在来線のパイプの細さも、乗り換え客でパンクすることも、わかりきっていたはず。

新幹線の乗車定員と在来線の乗車定員を比較すればわかる、単純計算。

その上、少ない本数の新幹線に乗客が集中することも、過去事例からわかりきっていたこと。

であれば、1時間2本の告知時点、あるいは、もっと早く「初電」の時点で、

・「終日運休」 を宣言。

・新幹線は動いていないのと同じ状況、と告知。

すべきだった。

その情報さえあれば、旅客は代替経路や計画変更を選択でき、何時間も駅で待つというバカげた体験をせずに済んだはず。

・遠回りだが、北陸新幹線+サンダーバードで、東京と京都/大阪へ。

・飛行機で伊丹や関空経由で関西や山陽方面へ。

・名古屋近辺なら名鉄や近鉄で京都/大阪へ。

・移動をあすへ順延。 

・旅行を中止。

 

■JR東海が取り得た列車運行対応

終日不通が続く前提で早々に動いていれば、JR東海管内の在来線と新幹線をシンクロさせて東京-京都/大阪間人流を確保、する手はいくつもあったはず。

例えば...

・新幹線稼働区間でのぞみを10-20分間隔で折り返し運行。

・新幹線不通区間は在来線を16両編成化で通常ダイヤで運行。

たったこれだけで、不通区間の乗り換えが2回増えはするが、駅が人であふれかえる/何時間も待たされる、という異常事態は避けられたはず。

 

まず、東海道新幹線の折り返し運行。

今回の新幹線の折り返し駅は、すべて待避線があるので、折り返し運用の支障が少ない。

浜松駅:4線

豊橋駅(途中から浜松駅から延伸):変形3線

名古屋駅:4線

また、新幹線の運転本数を確保することで、一定程度人流を維持できるので、他の代替手段へ変更する人数を減らし、混乱の波及を減らせたはず。


次に、在来線の臨時編成。

在来線ダイヤをいじると混乱に拍車がかかり、運転要員確保も難しく手間が掛かることから、ダイヤは維持。

一方で、1編成16両に増結し、新幹線との乗り換え客の乗車定員を確保、新幹線稼働駅まで運ぶ。

16両がムズカシイ場合には、最低でも10両以上で運行し、少しでも乗り残しを減らす。

 

もう一つの考慮点は、名古屋以西の山陽新幹線との連携。

こちらは、山陽新幹線との直通運転を維持。これは、昨年の大混乱の教訓で、のぞみひかりの運行本数を維持した状態での新大阪駅折り返しはできない、と判明しているから。

運休や直通取り止めが一部発生するのはやむなしとしても、のぞみとひかりの東側終点を東京駅から名古屋駅に変更するだけで済み、平時のダイヤをほぼ維持できたのではないか?

※紙のダイヤで例えるなら、名古屋駅以東を切り離すだけ(=がないことにするだけ)。

折り返しを名古屋駅にするだけなので、東京駅でやっていたことを名古屋駅で実施するだけなので、車両取回しにも支障はない。

※名古屋駅に入線後、そのまま京都/新大阪方面へ折り返すだけ。東京駅と同様の運用。

唯一の違いは、大井車両センターとの回送列車出し入れだが、頻度は低いし、主な目的は営業車両の交換なので、実施しなくても大勢に影響はなし。

 

■参考-東海道新幹線 保守用車両脱線事故

2024年7月22日(月) 3時37分頃、東海道新幹線上り線 三河安城駅-豊橋駅間で発生。

線路上に停車していたマルチプルタイタンパ車両に、砕石運搬散布車両が時速40kmで激突。

双方の車両の一部が脱線、 乗務員2名が重軽傷。

ブレーキ装置を操作したが減速しなかった、と砕石運搬車両運転士の証言が公表済み。

ただ、なぜ減速しなかったのかは、現時点未解明。

脱線した車両の撤去に手間取り、終日、東海道新幹線は東京-大阪直通便を運航できず、25万人が影響を受ける、深刻な影響が出た。


以上☆